「声、小さいよ、聴こえないよ!」「ここ、笑うところだよ!」──と、ためらうことなく畳みかけます。
英語の文法をリズムで覚えてもらう授業。「be動詞♪ プラス過去分詞♪ by人♪ in場所♪ 受け身っ♫」と黒板を叩きながら歌います。一瞬シーンとします。ポカンと口をあけている子も。冷や汗が背中にタラリ。スベったかな…。が、ここでめげては元の木阿弥。徹底的に役者になって、おどけるのです。この私がラップなんて、などと弱気にならないことです。
これは研修で教わった手法ですが、人格まで豹変させるのは自分流です。文法を覚えさせるだけでなく、子どもたちとの距離を縮めることも目的。その成否は一人ひとりの顏に書いてあります。楽しそうな顔ならYES。それほどでもないならNO。YESが出るまで、あきらめず、トライ&エラーです。いや、正確にはトライアル&エラーでしたね。
役所の勤めを辞めるとき、まわりから大反対されました。けれど、文理の教師になり、子どもたちと接していると、自分の足りないところに気づかされます。その気づきと向き合い、試行錯誤する中で、子どもの素直なうなずきに心が満たされる瞬間があります。それは自分のカラを破った瞬間であり、いま生きているという実感に胸を震わせる瞬間です。もし、あのままだったら、こんな私はいなかった、と思います。
先生が楽しいと子どもたちも楽しい。子どもたちが楽しいと先生も楽しい。このよく耳にする、けれど自分事としての貴重な発見が、私という人間に成長をもたらしているように感じています。あきらめなければ、子どもたちは必ずついてきてくれます。さぁ、どんどんスベりましょう!