「夏合宿に先生が来てくれてよかった」──その合宿は2泊3日の日程で、富士吉田市のホテルで開催されました。授業後、ある中3の女子生徒が私のところにやって来て、そう言ってくれたのです。小さな自信が胸にきざし、教師としての第一歩を踏み出せたと実感しました。
文理のお世話になる前は、銀行勤めをしていた私。しかし、教育実習で子どもたちとかかわった経験が忘れられません。休み時間に楽しくオシャベリしたこと、別れ際にメッセージの寄せ書きを手渡され、こっそりうれし泣きしたこと…。うってかわって銀行内は、私と同じように辛そうな顔をしている先輩方が数多く見受けられ、自分もこのまま頑張るべきなのではないのか、それが仕事というものではないか、と思い直したこともたびたび。けれど、「自分が自分でなくなりそう」という葛藤は強くなるばかりです。そして辞める決心をしても、銀行に就職できたことを喜んでいた両親に、なかなか切り出せませんでした。「まだ1年もやってないじゃん」「もったいないよ」などと友達も。同じ言葉を自分自身に何度言い聞かせたことか…。
さて、文理に再就職し、半年がたちました。中学生はまわりの目を気にしだす年頃ですし、天真爛漫に振る舞うことも次第に少なくなります。授業の手応えがイマイチだと、「ほんとに分かってくれたのかな」とか「私の授業、楽しくないのかな」とか気持ちが揺れ動く毎日です。それでも前向きになれるのは、子どもたちのまなざしがそこにあり、私に向けられているからです。私が真剣になるほど、そのまなざしは真剣さを増し、未熟な私を勇気づけ、背中を押してくれます。
銀行から文理へ。後悔はまったくありません。両親も応援してくれています。回り道した私があなたにアドバイスできるとしたら、次の言葉しかありません。安定性より、世間体より、やりたいことをやるのが一番!