「先生、難しすぎる」「今度は簡単すぎる」――― あれは文理のSSクラスが開設された年のことでした。
地域トップ校を目指す特別選抜クラスを、文理では「SSクラス」と呼び習わしています。勉強の仕方や心構え、競い合う強さなども身につけてもらい、毎年多数の合格者を輩出しています。英語のクラスを任された私は、生徒たちの学力レベルと自分の教え方との調整に四苦八苦しましたが、初年度にもかかわらず、合格者数は倍近くまで伸びました。各校舎の通常授業と同じレベルの授業ではもの足りないと感じさせてしまいますし、二歩先、三歩先の授業は行き過ぎになってしまう。つねに一歩先くらいを教えなくてはなりません。
私は入社後、いったん離職し、カナダに1年ほど留学して、英語で英語を教える資格「TESOL」(Teaching English to Speakers of Other Languages)を取得しました。意識の逆転が起こったのは、文理に戻ってからでした。以前の私は、教えるうえで一番大事なことは自分の英語力だと考えていましたが、生徒をよく見て、よく知ろうとする準備こそ何よりも重要だと気づいたのです。SSクラスにおいても、合格者が増えた以上に、「このクラスで英語が好きになった」という生徒の声が多数寄せられ、大きな励みになりました。
手前味噌ですが、私は「学研SS級講師」の認定をいただいています。5段階ある中でもSS級は最高峰の認定資格で、全国数千名の塾教師が挑戦し、その年に最上級講師認定されたのは6名だけだったそうです。生徒たちへの準備に精一杯、心を砕いた賜だと思います。
学ぶ側も教える側も、成長するには努力するしかありません。私たちの努力とは、日々の研鑽やコミュニケーションを含め、授業準備をすることであり、準備したら準備しただけ手にする実りも大きくなります。教壇という舞台で生徒たちを魅せるため、表情のつくり方、体の動かし方まで工夫します。