「とにかく、やることはやろう!」──教室の子どもたちに、そして自分自身にも言い聞かせていました。
3年前に校舎長となり、生徒も保護者も教師陣もひっぱる立場に。しかし私は熱血タイプではなく、リーダーシップに特別秀でているわけでもありません。どうすれば務まるか悩んだ挙句、こう決めました。いつも静かに淡々と。叱るときは正論で。納得してくれるまで粘り強く。つまり、自分らしくやろうと…。すると徐々にですが、かけた時間とエネルギーが子どもたちの成績に表れ始めました。それだけではありません。ともすれば自己本位に陥りがちだった私が、後輩教師の成長を、我が身のこと以上に、うれしく感じていることに気づきました。その変わり様は誰より自分が驚いているほどです。
文理の理念は、まず、社会で通用する人間に育てること。工夫する力、考え抜く力は、効率を優先すると身につきにくい。文理のやり方こそ一見非効率に見えて、むしろ効率的ではないのか。そして、まったく同じことが、私たち教師の成長にも言えるのではないだろうか。
「やることはやろう!」と呼びかけた子どもたち。その合格発表の日がやってきました。奇跡が起きたのです。中1から手塩にかけた90余名が、ただの一人も欠けることなく合格です。中には志望校を高く設定し、合格は難しいと思われた子も何人か含まれています。その夜は飲みつけないお酒に酔い、静かに泣きました。涙が出るのは何年かぶりでした。
今年度の3年生も目指すは全員合格です。それこそ奇跡のまた奇跡かもしれません。しかし、あえて挑戦したいと思います。クールなようで、実は超・負けず嫌いの自分らしく。