国語科の「THE KING」あらかわです。この校舎ブログでは私が面白いと思った小説や作家をいろいろと紹介し、能書きを垂れたいと思います。
今回は“世界の”村上春樹について(思いのほか長くなってしまったので、2回に分けて)綴ってみようと思います。
村上春樹は「非現実と現実の境界線」をめぐる物語を繰り返し書いてきた作家である。あるときは「不意に壁の向こうに抜けて、二度と戻ってこなかった人」たちをめぐる物語として『ノルウェイの森』『ダンス・ダンス・ダンス』『国境の南、太陽の西』『スプートニクの恋人』『海辺のカフカ』など。あるときは「壁の向こうから私たちの世界に侵入してくる【邪悪なもの】」を押し戻す仕事を引き受けた【センチネル(守り手)】として『羊をめぐる冒険』『かえるくん、東京を救う』『ねじまき鳥クロニクル』『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』『アフターダーク』『1Q84』『騎士団長殺し』など。いずれの場合も物語は「境界線」をめぐって展開する。
「越境して立ち去ったもの」は村上作品では誰一人戻ってこない。取り残された者は、なぜ彼/彼女が消え去ったのか、ついにその理由は知らされない。だが知りたい。だから「境界線」の際まで行ってみる。それでも越境者が立ち去った理由は開示されない。そのことが主人公に深い傷を残す。けれどもその代償に主人公は成熟の階段を一つだけ上り、この根源的に無意味な世界にかろうじて残された「ささやかだけれど大切なもの」を愛することを学ぶ。これは村上文学のほとんど全ての物語に共通している説話構造である。
ということで、村上作品を抽象化した前半部はここまで。
後半部で、その村上作品に惹かれ読み続ける理由を述べてみたいと思います。
そんな村上春樹作品の中でも個人的に好きな作品(初期の作品が多いなぁ・・・。おっと、最近の作品の批判はやめるんだ!)
長編作品
・『風の歌を聴け』 ・『羊をめぐる冒険』 ・『ダンス・ダンス・ダンス』
・『海辺のカフカ』(2005年に「ニューヨーク・タイムズ」紙で、年間の「ベストブック10冊」に選出!)
短編集
・『カンガルー日和』 ・『神の子どもたちはみな踊る』