今年の冬、一人の小説家が亡くなりました。有名な賞をとった会見での発言が話題になりました。自らの体験を基に何に対しても悪態をつくスタイルで、小説と日常生活を記録した日記を逐次出しており、日記のエピソードが後日小説になったりもしていました。
その日記に、ファンを名乗る女性に声をかけられたエピソードがありました。女性が図書館で借りて読んでいる旨を聞き、借りて読むのでは作者である自分にお金が入らないだことの、ファンであるなら買って読めだことの、例により悪態をついていました。自虐的でもあり、露悪趣味でもあり、無頼風でもあった彼の作風にピッタリの内容ではありましたが、その後彼が自らを省みたかどうかは分かりません。金を払ってでも読みたいと、手許に書籍として残したいと思わせる文を書けなかったのだと。
全ての小中学生が学校で無料で教わる内容を、お金を払ってでも通いたい、と思わせる授業と面倒見を提供するプロであらねばと気持ちを引き締めます。彼のもらった賞を今年は誰がもらう、という話題が新聞に載る度に、自らを省みることにしましょう。彼の無頼風に敬意を表して、冥福は祈らないとしても。